アルカリ骨材反応(ASR)により劣化した構造物における総合補修システム化 運用マニュアル | コンクリート構造物に生じたASR(アルカリ骨材反応)を抑制する補修工法 亜硝酸リチウムを主成分としたASR抑制剤をコンクリート中に圧入し、構造物全体のASR(アルカリ骨材反応)を根本的に抑制|ASRリチウム工法協会

アルカリ骨材反応(ASR)により劣化した構造物における
総合補修システム化 運用マニュアル

初版

平成23年5月 ASRリチウム工法協会

(1)アルカリ骨材反応(ASR)補修対策の現状

ASR膨張はアルカリおよび水分の存在の下進行するため、コンクリート内部の水分を外部へ逸散させるとともに、外部から供給されるのを完全に遮断することが理想的であるが、現実には困難な場合が多い。し
たがって、ASR膨張を進行させるのに十分なアルカリおよび水分がコンクリート中に存在する場合には、ASR膨張の進行を完全に停止させることは極めて困難である。ASRにより劣化した構造物に対して、様々な補修工法が適用されているものの、十分な効果を発揮し豊富な実績を有する補修工法は確立されていないのが現状である。
ASRにより劣化した構造物に対する一般的補修・補強工法は提示がなされているが、多種多様な使用・環境条件におかれた実構造物に生じたASRによる劣化状況に対し、維持管理における一意的で明確なマニ
ュアルは得られていないのが現状である。したがって、構造物の種類、使用・環境条件や構造物の外観上のグレードおよび詳細点検等の結果を考慮して構造物の現有性能を判断し、所定の要求性能を満足するライフ
サイクルコストを考慮した補修・補強工法を選定することが重要である。
 

(2)補修対策選定のおける留意点

補修対策選定においては、以下の項目について留意することが重要となる。
① 補修履歴・再劣化の有無
② ASR劣化過程の確実な把握
③ ASRの膨張性
・残存膨張試験(JCIDD2 法等)により、今後も有害な膨張が進行するかの推定
・過去の定期的な調査結果等より、ASR の進行性や進行速度を推定
③ 構造物の立地・構造・環境条件
・水処理、水分遮断による施工が可能か、また、ASR 抑制効果が期待できる条件か
・構造物へのアプローチは容易か
④ 構造物の予定供用年数
⑤ 構造物の重要度
 

(3)補修対策選定について

補修対策の選定においては、上記留意点および、現状の劣化過程において以後のASR膨張がどの程度発生するかにより、表-1に示す一般的対策工法(◎;主対策工法、○;主対策工法に次いで適用性の高い工法)が選定される。
しかしながら、最終的対策工法の選定においては、構造物の劣化状況のみで対策を講じることはできず、主として、オーナーのシナリオを十分勘案し、表-2の項目
① ASR膨張抑制効果/②耐荷力低下抑制効果/③維持管理性/④施工性/⑤安全性/⑤工期、経済性
を基に、総合的な判断、最適な補修対策を立案することが重要であると考えられる。
しかしながら、総合的な判断においては、表-1、2に固定化されること無く、最終的には専門技術者による知見を基にした、補修対策の判断が重要となる。
 
表-1 ASR劣化過程に応じた 基本補修対策一覧表

表-1 ASR劣化過程に応じた 基本補修対策一覧表

表-2 適用構造物に応じた 補修対策選定

表-2 適用構造物に応じた 補修対策選定