アルカリ骨材反応抑制|ASRリチウム工法協会
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大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発|コンクリート構造物に生じたASR(アルカリ骨材反応)を抑制する補修工法 亜硝酸リチウムを主成分としたASR抑制剤をコンクリート中に圧入し、構造物全体のASR(アルカリ骨材反応)を根本的に抑制|ASRリチウム工法協会

大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発

 
大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発

(株)鴻池組 土木本部技術部 金好 昭彦
○(株)鴻池組 土木本部技術部 内田 博之

 

1.概要

 ASRの膨張作用に起因するひび割れは、これまではコンクリート表面部分に発生し、主筋より内部には達していないと考えられていた。
 しかし、時間の経過とともに橋脚等の部材断面の大きな構造物などでは、内部においてもASRが進行し部材表面部のみならず内部においてもひび割れが発生しており1)、コンクリート強度および弾性係数が著しく低下してきている。さらには、鉄筋がコンクリートの膨張により破断した例もある2)。当社は、これまで抜本的な対策方法の無かった大型コンクリート部材内部におけるASRの抑制を目的として、リチウムを含むASR抑制剤をコンクリート内部に加圧注入する工法について、研究・開発を行った。
 

2.試験概要

2.1 供試体

 試験に用いたコンクリート供試体の配合を表-1に示す。細骨材は非反応性の山砂(兵庫県垂水産)、粗骨材は非反応性の砕石(兵庫県亀岡産)と反応性骨材として二上山系飛鳥山産砕石(ガラス質安山岩 Sc=648m・mol/l、Rc=238m・mol/l;50%)・長崎産砕石(輝石安山岩 Sc=548m・mol/l、Rc=119m・mol/l;50%)であり、両者を重量比で1:1で混合したものを使用した。
 なお、等価Na2O量が8kg/m3になるよう練混ぜ水にNaClを添加し、アルカリ量を調節した。
 製作した供試体はRC梁であり、Aタイプ;寸法200×200×1,800mm、Bタイプ;寸法150×300×1,800mmの2種類とした。
 供試体は平成4年に作製し、材齢7年・屋外暴露7年が経過したものである(写真-1)。また、供試体表面からの抑制剤の漏出を防ぐために、供試体全面に有機無機複合厚膜型水系塗料を塗布した。
コンクリート供試体の配合|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
表-1 コンクリート供試体の配合
供試体(材齢7年経過)|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
写真-1 供試体(材齢7年経過)
試験装置|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
図-1 試験装置

2.2 ASR抑制剤

 抑制剤は亜硝酸リチウムを主成分とし、コンクリートへの圧入・浸透・拡散性を阻害しない範囲内で高濃度化(40%重量濃度)した水溶液を使用した。
 

2.3 試験方法

 試験装置を図-1に示す。圧入はφ34mmの孔をAタイプで300mm、Bタイプで200mm削孔し、圧入孔とした。
 圧入に際しては圧入孔の口元で液漏れを防ぐため、中空パッカー(図-2)を配置した。パッカーはゴムスリーブをナットで締め込むことにより膨張させ最大4.0MPaの注入圧力に耐える構造とした。
 試験ケースを表-2に示す。圧入パターンは長辺方向圧入(Aタイプ、短辺方向圧入(Bタイプ)の2パターンとし、各パターンにおいて注入圧力を、低圧・高圧注入工法で一般に設定されている注入圧を基本に0.1、0.5、1.0MPa(低圧注入〜高圧注入)の3段階に変化させ試験を行った。
 必要圧入量としては、供試体アルカリ総量(Na2O換算)2.3%とし、過去の研究報告3)をもとにLi/Naモル比が1.0(必要リチウム量1.83kg/m3)となるように抑制剤34.6kg/m3(1.80kg/供試体)とした。
加圧パッカー|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
図-2 加圧パッカー
試験ケース|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
表-2 試験ケース

2.4 試験項目

2.4.1 リチウムイオンの定量分析
 浸透・拡散状況の確認を行うため、抑制剤圧入完了後、圧入孔位置から100,300,500,700mm(短辺方向圧入は100,300,500mm)の位置(図-1)よりコンクリートコア(φ75mm)を採取し、リチウムイオンの定量分析を行った。また、亜硝酸イオン0.1%以上で明らかな着色が見られる呈色液による呈色試験も行った。
 
2.4.2 促進膨張試験
 ASR抑制効果の確認のため、抑制剤圧入完了後、圧入孔位置から200,400mmの位置(図-1)より採取したコンクリートコア(φ75mm)にコンタクトポイントを設置し、ポイント間の変化量を膨張量として測定した。コアの養生条件を20℃、RH100%として約4週間程度コアの膨張ひずみ(開放膨張量)を測定し、引続き40℃,RH100%で約9週間程度促進養生し、コアの膨張ひずみ(残存膨張量)の測定を行った。
 

3.試験結果

3.1 供試体の力学的特性

強度試験結果|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
図-3 強度試験結果
 試験開始前(材齢7年,自然暴露7年)に,各供試体よりコア(φ75mm)を採取し、圧縮強度および静弾性係数を測定した結果を図-3に示す。
供試体表面にはASRによる亀甲状のひびわれ( ひび割れ幅最大1.0mm)が発生していた。
 圧縮強度は約30N/mm2で7年前(材齢28日,40N/mm2)と比較するとASRにより約10N/mm2程度強度が低下し、また、健全な圧縮強度30N/mm2のコンクリートから推定される静弾性係数と比較すると供試体の弾性係数は約60%程度まで低下していた。
 

3.2 抑制剤の浸透・拡散状況

抑制剤の圧入量と圧入日数の関係|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
図-4 抑制剤の圧入量と圧入日数の関係
 抑制剤(亜硝酸リチウム水溶液)の圧入量と圧入日数との関係を図-4に示す。Aタイプ(A4,A6,A8タイプ)においては圧入日数2ヶ月経過時点で注入圧力が高い程、浸透・ 拡散に対して効果があり、注入圧力0.1MPa(A4タイプ)では所定の圧入量を浸透・ 拡散するのに約40日程度を要した。
 また、圧入パターンで比較した場合、短辺方向圧入(Bタイプ)の方が、浸透時間に対しては有効であると考えられる。
 また、注入圧力1.0MPa(B1タイプ)においては、圧入孔付近より抑制剤の滲み出しが確認された。これは、圧入孔近傍に存在するひび割れがコンクリート表面まで貫通しており、高圧のためコンクリート表面へ浸透したためと考えられる。浸透状況を写真-2 に示す。抑制剤の圧入完了後、リチウム定量分析用コアに呈色液を吹き付け、リチウムの浸透・ 拡散状況を観察したものである。圧入孔から距離が離れるに従い、浸透量が低減していることが認められたが、内部のひび割れを通じて圧入孔から500mm程度の位置までは浸透していることが確認された。
浸透状況(呈色状);B2(注入圧力=0.5Mpa)|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル
写真-2 浸透状況(呈色状);B2(注入圧力=0.5Mpa)

3.3 リチウム定量分析結果

図-5 リチウム含有量と浸透距離の関係|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
図-5 リチウム含有量と浸透距離の関係
 各タイプでのリチウム含有量と圧入孔位置からの距離(浸透距離)の関係を図-5 に示す。リチウム含有量は圧入孔から離れるに従い、減少する傾向を示した。
 また、Aタイプにおいて注入圧力が高い程、浸透・ 拡散性が大きくなっているが、注入圧力0.5MPa(A5タイプ)と1.0MPa(A8タイプ)との間には明らかな差異は見られなかった。
 Bタイプにおいて1.0MPaのB1タイプの効果が現れていないのは、抑制剤の漏出が原因と考えられる。
 本供試体での必要リチウム量(1.83kg/m3,Li+/Na+モル比1.0)を満足する浸透距離は、注入圧力0.5MPaで比較した場合、A5タイプで約150mm 、B2タイプで約300mmに達する事が確認された。
 しかし、一般構造物(単位セメント量300kg/m3)として、アルカリ総量(Na2O換算)をセメント量の1%重量濃度と想定した場合、必要リチウム量は0.68kg/3となり、図-5に示したように、浸透距離はA5タイプで約200mm、B2タイプで約600mm程度までは浸透可能と考えられる。
 また、圧入パターンでの比較を行った場合、Bタイプ( 短辺方向圧入)の方がAタイプ(長辺方向圧入)より約2倍程度浸透距離に対して効果があることが確認された。
 

3.4 促進膨張試験結果

 圧入後のコンクリート供試体から圧入孔より200,400mmの位置でコアを採取し、開放膨張量・残存膨張量の測定を行った。
 図-6 に示す促進膨張試験結果(注入圧力0.5MPa)より、各タイプとも圧入孔に近い程抑制効果が大きく、抑制剤の圧入によりASRによる膨張が約1/2程度まで抑制されることが確認された。
 各位置でのモル比(Li+/Na+)はB2タイプが200mmの位置で1.5、400mmの位置で0.7、A5タイプが200mmの位置で0.3、400mmの位置で0.1であった。
促進膨張試験結果|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発

3.5 ASR抑制効果の期待できる浸透・拡散規模

 今回の限定された条件のもとでASRにより劣化した供試体を用い、その内部に亜硝酸リチウムを主成分とする抑制剤を圧入することにより、
ASR抑制効果が期待できる圧入規模の検討を行った。その結果、圧入孔(φ34mm)を用い、抑制剤を0.5MPaで1〜2ヶ月、圧入を継続すれば圧入孔周方向に抑制剤の浸透距離が約300〜600mm迄確保することができ、また、コア膨張量の約1/2程度まで低減が可能であることが確認された。
 しかし、リチウムの浸透条件としてひび割れの存在が重要であり、ひび割れからの浸透でコンクリート内部まで直接リチウムイオンを供給できるが、実構造物内部ひび割れの規模の不確実性や長期にわたる拡散効果等、供試体レベルでは確認が困難である。このため、実構造物での適応試験を行った。
 

4. 実構造物への適応

4.1 施工概要

施工フロー|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
図-8 施工フロー
 適応構造物は、構築後約25年経過したφ2.0mの橋脚柱部(写真-3)であり、12年前の調査でASRによる劣化と判断され、表面処理工法による補修が実施された。
 その後、ひび割れの進展や再発生が見られ、最近の調査でASRによる劣化の継続が確認された。
 圧入孔の配置を図-7、施工フローを図-8 に示す。供試体試験の結果に基づき、圧入孔1本当たりの浸透距離を0.5m と設定し、平面的に2列、鉛直方向に4段配置した。
 抑制剤の必要圧入量は対象構造物のアルカリ量分析結果に基づき、過去の研究報告3)をもとにLi+/Na+モル比が1.0(必要リチウム量1.09kg/m3)となるように1圧入孔あたり32.3kgとし、約2ヶ月間で圧入を完了した。
適応構造物|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
写真-3 適応構造物
圧入孔の配置と浸透拡散のイメージ|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
図-7 圧入孔の配置と浸透拡散のイメージ

4.2 抑止効果の確認

コア採取位置図|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
図-9 コア採取位置図
 圧入完了後、直ちにコンクリートコア(φ75mm)を採取し(図-9参照)、呈色試験、リチウム量の定量分析、促進膨張試験を行い、抑制効果の確認を行った。
 
4.2.1 呈色試験
呈色試験状況|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
写真-4 呈色試験状況
 写真-4に呈色試験結果を示す。No.1では柱主筋位置まで、No.2では柱表面側から約40cmの位置まで、No.3ではほぼ全面褐色に呈色している様子がわかる。
 
4.2.2 リチウム量の定量分析
リチウム定量分析結果|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
図-10 リチウム定量分析結果
 リチウム量の定量分析により、詳細な浸透・拡散状況の確認を行った。図-10より、噴出口端から0.5mの位置までのリチウム含有はASRを抑制するのに必要とされるリチウム量1.09kg/m3を満たしており、実構造物においても抑制剤噴出口端から0.5mの浸透・拡散範囲を確保できることが確認できた。
 
4.2.3 促進膨張試験
膨張量低減結果|大型コンクリート部材におけるリチウムのASR抑制効果を目的としたリニューアル技術の開発
図-11 膨張量低減結果
 コンクリートコアの促進膨張試験結果(促進膨張試験13週)を基に、圧入後の膨脹量低減率(残存膨張量)を図-11に示す。
必要リチウム量以上を含有しているコンクリートでは圧入前に比べ残存膨張量が約50%以下に低減されていることが確認できた。
 

まとめ

 今回、亜硝酸リチウムを主成分とする抑制剤をコンクリート内部より加圧注入することにより、その内部でのASRによる膨張を抑制する工法の開発を行った。
 本工法は従来工法では難しいと考えられている、コンクリート内部のASRの膨張抑制を目的としており、近年報告1)2)されている、ASRによる被害の抜本的な対策として、期待できると考える。
 現在、実構造物レベルでの膨張量測定を行っており、構造物全体への抑制効果(長期間)確認中である。今後は、実用化に向け、
 ヽ銅鏐渋なおよび劣化度合等への適応確認
 合理的なシステムの確立
を目標に、詳細な検討や改良を加え、本工法をライフサイクルの観点から、合理的な維持管理方法の一手法となるよう発展させる予定である。
 最後に、本技術の開発にあたって終始御指導頂いた京都大学大学院宮川豊章教授、また、御協力頂いた大日本塗料(株)、(株)大阪防水建設社、三興塗料(株)の各社に深く感謝の意を表します。
 

参考文献

1)小野紘一・田口守:AAR橋脚の長期挙動と内部劣化、第53回土木学会年次学術講演会講演概要集、第5部、PP.192-193、1998.10
2)土木学会、コンクリート標準示方書[維持管理編]制定資料、PP.75 、2001.1
3)高倉・坂口・友沢・阿部:Li化合物によるアルカリ骨年次論文報告集、Vol.10、No.2、PP.761-766、1988
 
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